強迫性障害の基礎知識
Obsessive Compulsive Disorder
Obsessive「過度の」、Compulsive「強迫観念に支配された」、Disorder「疾患」
通称OCDと呼ばれる精神疾患の一種です。
簡単に説明すると、強迫観念(間違った認識)を持ち、それによって強迫行為(不可解な行動)を起こしてしまう心の病です。
現在、我が国の一般人口中における強迫性障害患者数や有病率の確かなデータは見られませんが、おおむね欧米と同様に1-2%程度、すなわち50-100人に1人、日本の総人口に換算すれば、100万人強の強迫性障害患者の存在が推定されます。
「強迫観念」とは
強迫観念とは、追い払おうとしても消えない「不安な考え」や「イメージ」のことをいいます。
それは、何度も繰り返し思い浮かんでくる特定の考えやイメージであり、非合理的で何の根拠もない妄想に過ぎないのですが、頭の中で「ばかばかしい」と思っていてはいても、なかなかそれらの考えを払拭することはできません。
例えば、「ガスの元栓を閉めただろうか?」「鍵を閉め忘れていないだろうか?」「病気になってしまうのではないか?」など、絶えず不安や恐怖に駆られてしまいます。
また、「○○をしなければ家族が不幸になる」「○○をしなければ、自分に不幸な出来事が起きてしまう」など、一見何の因果関係のないようなこともその対象となり、執拗な強迫観念に駆られることもあります。
そして、強迫観念に執着すればするほど、その強迫観念はますます強化され、本人の意志とは反対にその妄想がエスカレートしていくのがこの病の特徴です。
手を洗えば洗うほど手の洗浄行為をやめることができなくなりますし、確認行為を始めるとその行為をやめることができなくなるなど、一度強迫観念に囚われるとそこから抜け出せなくなり、ひどいときには錯乱状態になって、気が狂いそうな耐えがたい苦痛を強いられることもあります。
「強迫行為」とは
これらの行為を強迫行為といい、強迫観念がひきおこす不安や恐怖を取り除こうとして繰り返し行ってしまう行為のことをいいます。
そして、その理不尽な命令を無視すると、ひどい動悸や立ちくらみ、そして耐えがたい恐怖に襲われるため、多くのひとはその命令に屈してしまい、何度も繰り返し不合理な強迫行為を行わざるを得なくなるのです。
また、強迫観念と同じように強迫行為を繰り返せば繰り返すほど、その強迫的な衝動はますます強化され、そのスパンも短くなり、何度も頻繁に強迫行為を行うようになります。
強迫行為を行っている本人も「やめたい」と願っているのですが、その不安や恐怖から逃れられず、何度も繰り返しこの非合理的な行動をとってしまうのです。
強迫症状の悪循環
それで、注意しないといけないことが、これらは「日々強化」されていっているということです。
自分が病気であることを自覚しないまま、それは日々悪化していっているのです。
強迫観念に駆られる⇒その不安や恐怖を払拭するために強迫行為を行う
⇒不安は一時的に払拭されるが、しばらくするとより大きな不安や恐怖に襲われる
⇒強迫行為をやめられなくなる
⇒強迫性障害が悪化していく
このように一度強迫性障害を発症してしまうと、そこから抜け出すどことか、その症状を悪化させてしまうことのようが多いです。
その悪循環によって発生する苦痛こそが、強迫性障害なのです。
実際、以前当センターがカウンセリングした方で、身体の洗浄がやめられなくて、ほぼ一日中浴槽から出られなくなったというひともいました。
これらは、「過去のトラウマ」や「間違った認識」の積み重ねにより引き起こされます。
そして、これらの「間違った認識」は適切な改善方法で根本から改善していく必要があります。