強迫性障害の基礎知識


さまざまな症状



強迫性障害は、主に「不潔」「確認」「加害」「涜神(とくしん)」「不完全」「疾病」「縁起」「数唱」「保存」「性」「被害」「質問癖」「自殺」などが存在します。



不潔


強迫性障害の代表的な症状と言っていいのかもしれませんが、手洗いや入浴などの洗浄行為をいつまでもやめられない症状のことを言います。

過剰な洗浄行為の背景には、汚染への強い恐怖心があり、どんなに洗浄しても汚れているという感覚が消えないため洗浄行為をやめることができなくなってしまいます。

また、終わることのない洗浄行為に時間をとられてしまい、やるべきことができなくなり、日常生活もままならなくなってしまうケースもあります。

不潔と感じるものの対象は人それぞれで、ドアノブであったり、公衆トイレであったり、蛇口の取っ手、電車のつり革だったりするのですが、モノだけではなく特定の人物に対してもその対象となります。

たとえば、不潔と思っている相手や、自分にマイナスな影響を与える恐れのあるひともその対象となり、その人と接したり、その人が触ったものに触れたりするだけで過度の不安や恐怖を感じてしまいます。

それで、これは潔癖症ではありません。

潔癖症と誤解されることが多いですが、そこには過去のトラウマや間違った認識によって不潔とは何の関係のないようなものもその対象となることもあり、過剰に反応してしまいます。

逆を言えば、健常者が汚いと感じるようなものがあったとしても、過去のトラウマや間違った認識の対象外であれば過剰に反応することはありませんし、それが強迫観念に結びつくことはありません。



確認


これは、一度確認を始めたら、何度も繰り返し確認作業を行ってしまう強迫性障害のことを指します。

例えば、外出時に鍵がかかっているか何度も確認したり、ガスの元栓を閉じたか、水道の蛇口を閉めたか、明かりが消えているか、繰り返し確認をしないと不安が消えることはありません。

その他にも、ものを落とさなかったか、忘れ物がないか、汚いと思っているひと、ものに触れていないかや、

封筒に書類を間違いなく入れたか、車で人をひいてしまってはいないかなど不安を感じる対象となるものは多種多様でひとそれぞれ異なります。

また、一度不安が頭をよぎると何回確認をしても「大丈夫」という確信が得られないと、際限なく確認行為を繰り返してしまい、日常生活に大きな負担を強いられることになります。

更に症状が重症化すると、終わりのない確認作業に疲れ切ってしまい、外出すらままならなくなってしまうこともあります。

そして、ここで大事なことは、自身が苦痛を伴うだけではなく、周囲の人間にも迷惑を掛けてしまうということです。

自分で確認するだけでは心もとなく、家族に確認を求めたり、同じことを何度も尋ねたりしてしまうので、大きな負担を与えてしまいます。

また、家族だけではなく仕事上でも周囲に迷惑を掛けてしまうことがあることから、社会生活を営む上で大きなハンディキャップを背負っていると言えます。



加害


自分の不注意で誰かにケガをさせてしまわないか、衝動的にひとを突き飛ばしたり、ひとに罵声を浴びせてしまわないか、大切な人を傷つけてしまうのではないかなど、自分が何か悪いことをしてしまうイメージが頭に浮かび離れなくなる症状のことを言います。

そして、実際に誰にも危害を与えていないという確信を得るため、何度も確認行為を行いますが、それらはあくまでイメージでしかないため、危害を加えたという事実を見出すことはできず、その不安が解消されることはありません。

そのため、解消されることのない不安を解消するため際限のない確認行為を行うようになり、実際に犯してもいない罪の意識に苦しみ続けることになります。



涜神(とくしん)


涜(とく)とは“汚す”という意味があり、すなわち“神を汚している、冒涜している”というような考えが頭をよぎり、「バチがあたるかもしれない」「家族に不幸なことが起こるかもしれない」といった不安に駆られることをいいます。

神さま、仏さま、ご先祖さま、神社、お寺、神棚、仏壇、お墓などがその対象となります。

そして、あるときふっとそれらの対象を冒涜したような思いが頭をよぎり、強い恐怖感にとらわれます。

多くの人はこの恐怖感から逃れるために必死になって許しを請うようになるのです。

例えば、神社を参拝中に何か無礼な行いがあったのではないかと錯覚すれば、仏殿に向かって何度も謝らないと恐怖感が払拭されませんし、頭の中でご先祖様を冒涜したようなイメージが頭に浮かべば、ご先祖様に対して何度も許しを請うようになります。

今思えば、それらは本人のただの思い込みなので、神さまも仏さまも、もちろんご先祖様に至っては本来守るべき相手である自分の子孫に対して罰を与えるようなことはしないと思うのですが、本人はこの「許しを請う」という強迫行為をやめることができないのです。



不完全


ものごとの正確性や対象性にこだわるひとは少なくありません。しかし、これが強迫性障害だった場合、単なるこだわりの域を超え、過度に正確性や対象性にとらわれてしまい、本来の目的を果たせなくなってしまいます。

例えば、何度も同じ箇所を読み直す、納得がいくまで文字を書き直すなど、一度気になりはじめると納得できるまで前へ進めなくなるため、ひとつの行為に対して時間を費やしてしまい、何もできなくなってしまいます。

また、決まった場所に決まった配列で物を並べたり、対象性を保ったり、本人にとって決まった位置に収められていないと不安に駆られます。

イギリスのサッカー選手であるデビット・ベッカム選手が冷蔵庫のなかにある飲み物のビンやカンなどの数が奇数だと大きな不安を感じてしまい、必ず偶数で左右対称に完璧に並べないと気が済まないというのは有名な話です。

また、自分の決めている順序通りにものごとを進めていかないと不安になり、順序を間違うと最初からやり直し、入浴するだけで半日以上費やしてしまうケースもあります。



疾病


体調や病気に対して過度の不安を感じます。

例えば、自分が重い病や、特定の病気(ガンやHIVウイルスなど)にかかっていることを心配し、何度も検査を繰り返してしまいます。

そして、「異常なし」と診断されても不安が払拭されることはありません。

また、バイ菌からの病気の感染を恐れ、過度の除菌や手洗いなどの洗浄行為をやめられなくなり、社会生活を営む上で大きなハンデを背負ってしまいます。



縁起


縁起、迷信、ジンクスを過剰に気にします。

朝起きてから夜寝るまで、毎日一定の手順で行動しなければ気が済まなかったり、ある行動をとる前に必ずしておかなければならない科学的根拠のない行動をとることがあります。

例えば、

①道を曲がる回数が奇数では縁起が悪いと思い込み、どんなに遠回りになっても偶数回になる道順を選ぶ

②毎日必ず朝食の前に仏壇のお水を替えお経を唱える

③数珠を常に腕に身に付ける

④靴を右から履かないと家族が不幸になると思い込む

⑤タイルの継ぎ目を踏むと良くないことが起きると思い、歩行が困難になる

⑥おみくじで「凶」もしくは「大凶」が出たからと必要以上に心配してしまう

-など、何の根拠もないことですが、これらの縁起、迷信、ジンクスを守らないと不幸になるとか、何か悪いことが起きてしまうような錯覚に襲われ、非合理的な行動をやめられなくなってしまいます。

そして、決まった手順ややり方にとらわれ大きな時間的負担を伴い、日常生活への影響はもちろんのこと、周囲の人間に多大な迷惑を掛けてしまうようになってしまいます。



数唱


4や9などの特定の数字に恐怖を感じます。

例えば、それらの数字を見るだけで大きな不安や恐怖を感じ、激しい動悸や眩暈を起こしてしまうため、どんな行為もそれらの数字の回数を避けるようになります。

しかし実際には、これらの数字を避けて生活や仕事をしていくことは大変困難なため、日常生活に大きな負担を生じたり、仕事上で大きなハンデを背負ってしまうことになります。

また、意味もなくふとした時に特定の数字を数えてしまったり、ある動作をするときに同じ言葉を決まった数だけ反復しないと行動に移れないなどの症状も報告されています。



保存


不必要なものでも、いつか必要になるかもしれないと過度に心配をし、いつまで経っても物を捨てることができなくなってしまう症状のことを言います。

自分でも不必要だと分かってはいるのですが、捨てることができず、部屋に溜め込んでしまいます。

そして、ただ溜め込むだけではなく、整理することもできないため、部屋の中は物やゴミで溢れかえり、日常生活に支障をきたすようなります。

ただ、一つ注意してほしいことが、健康なひとにもコレクターなどの収集癖のあるひとは少なくないということです。

そして、それらの行為と強迫性障害との大きな違いは、この保存行為によって苦痛を感じているかどうかです。

これは、不潔恐怖と潔癖症の違いと同じで、本人が好きでやっていて何も苦痛に感じなければ、それは強迫性障害ではないのです。




反道徳的で不謹慎な性的イメージが頭から離れない。また、倒錯した性行動や暴力的な性イメージ、具体的には小児性愛などの自分にとって受け入れがたいイメージが繰り返し頭に浮かんでしまい、過剰に反応してしまいます。

そして、それらの不謹慎で自分でも受け入れがたいイメージを打ち消すために、頭の中で何度もおまじないやお祈りなどの打ち消し行為を行っていることが多いのもこの症状の大きな特徴のひとつです。



被害


過度の被害妄想に頭を悩ませてしまいます。

過去に誰かが言った一言が忘れられずずっと傷ついたまま立ち直れなかったり、過去の嫌な出来事やマイナスのイメージを常に思い出してしまい極度の人間不信や対人恐怖症になってしまったり、ネガティブというか恨みや憎しみに近い感情に常に支配されてしまいます。

また、PTSDに似たようなところがあり、症状が悪化してくると、過去の理不尽で本人にとって目を覆いたくなるような大きなトラウマがフラッシュバックのように蘇ったり、過度の被害妄想で毎日悪夢にうなされるようになったり、夜中突然目が覚めて大量の冷や汗と激しい動機苦しめられたり、それがキッカケで不眠症にまで発展してしまうケースもあります。

そして、多くの人はこの症状のおかげでコミュニケーション能力の著しい低下を招き人間関係をうまく構築できなくなったり、それが原因で新たな被害妄想の材料となり症状を悪化させていくなど、負のスパイラルから逃れることができず、重度のうつ病や極度の人間不信、ノイローゼ―などの症状を引き起こしてしまいます。



質問癖


何でも徹底的に質問をしなければ気が済みません。

これは強迫性障害を引き起こしやすい性格のひとつである完璧主義が起因しているのですが、不完全恐怖と同様に一度気になりはじめると納得できるまで前へ進めなくなるため、ひとつの行為に対して時間を費やしてしまい、何もできなくなってしまいます。

そして、本来果たすべき目的を達成できなくなってしまいます。

また、他者に依存してしまう傾向が強く、質問される側も苦痛を覚えるようになり、大きな負担を与えてしまいます。

結果、周りからの評価が下がるばかりか、何事も完璧じゃないと気が済まない性格に心底疲れ切って物事の持続が難しくなったり、目標の達成が難しくなったりとマイナスな面が多く、一見合理的に見える行為ですが、実は非合理的な面が多いのがこの症状の特徴です。



自殺


自分が自殺してしまうのではないかと異常に恐れます。

もちろん、本当に自殺をしたいわけではなく、自殺という行為に過剰に反応し不安や恐怖を感じているだけなので大丈夫なのですが、気を付けないといけないのが、症状が悪化しうつ病を併発して、この自殺恐怖が自殺願望へと変わってしまうことです。

大変危険な強迫観念ですので、重症化する前に本質からの改善が必要となってきます。



その他


これらの典型的な強迫症状以外にも、同じように強迫傾向を示す障害があります。

①依存症

…セックス依存、買い物依存、アルコール依存

②摂食障害

…過食症、拒食症

③身体醜形障害

④心気症

⑤自傷行為

…リストカット、抜毛症

⑥チック、トゥレット障害







このように、これらは「単なるこだわり」とは異なります。

これらの症状は当事者を極度に疲弊させるため、これらの症状を引き起こしてしまう恐れのある状況を避けるようになり、生活の幅を狭めてしまうようになります。

また、症状が重症化すると、家に引きこもってしまったり、限られた範囲での生活しかできなくなるようになってしまうため、仕事や学業を続けることが困難になり社会生活を阻害されるようになってしまいます。

そして、当事者だけではなく、家族や親しい友人にも自身の強迫行為を強要する場合があり、本人だけではなく周りの大切なひとたちを巻き込み、大きな混乱と苦痛を与え、共に疲弊させてしまいます。







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